ちょっと肌寒い、4月の始まりの日。
周りは見渡す限りの人、人、人。
今日は、高校の入学式。
会場である高校の体育館で、クラス別の出席番号順横一列で並んでいる。
後にクラスメイトとなるのであろう左隣の同級生をちらりと横目で見る。
顔が堅い。笑顔の”え“の字もない。
...緊張してるんだろうな
私も、人のこと言えないんですけど。
私たちが入学する「波桜高校」は、偏差値高めのちょっといい高校。
「2年生がヤバい」とか
「部活内のいじめがひどい」とか
いろんな闇深ーい噂を聞いた。
「まぁ、しょせん噂は噂っしょ!」
そうやってこれまで一蹴してきた。
そして、現在。
「誰も知ってる人がいないっ...!」
私は重度の人見知りなのだ。
うちの通っていた月陽中学校では、3つの小学校校区の児童が生徒として迎え入れられた。
1クラス45名。
この年の1年は、荒れに荒れまくっていた。
同じ小学校の友達と一緒のクラスにななれるかもしれないという一筋の希望に私は運命を賭け、なんとか仲のいい友達と一緒になれることになった。
ところが、その仲のいい友達が入学してからわずか1週間で転校。
1人ぼっちになった私は恋などするわけもなく、寂しすぎる中学校生活を送った。
「私は!高校生活は、輝かしい青春を送ってみたい!」
孤独に3年耐えた私は、こう決心。
地元で一番偏差値の高い波桜高校を受験するために猛勉強した。
結果、合格。
あまりの嬉しさに、私は1kg幸せ太りしたくらいだ。
そう、そうだよ!!
心に決めたじゃん!
輝かしい青春を送るって!!
このままじゃ灰色の思い出しかないって!!
せめて隣の人と喋ろうよ自分!
「ねぇ、君。」
「っえ?!」
左隣の人に突然声を掛けられた。
「さっきからすごく悩んだ顔してるけど、大丈夫そ?体調悪い?」
「へっ、あっ、いやっ大丈夫です...」
まさか、顔に出てたなんて。
「うわ、恥ずかしすぎて死にそう...」
「...っぷはははっ!ウケる!気付いてなかったの?!ふはははっ!」
けらけらと笑う隣の人。
でもその笑い方は決して嫌みとかそういう感情はこもってなくて、心から笑ってる、そんな感じがした。
「あー、おもしろ。笑った笑った...
あっ、ごめん名前言ってなかったね。
私、塗森 亜美っていうの。君は?」
「あ、そうなんだ。私は猫葉ひなた。よろしくね。」
「ひなたね、なるほど!んじゃ、よろしくね!」
「よろしく、亜美。」
1人目の記念すべき友達、ゲットだぜ!
それからは、ざわついていた会場を校長先生が静め、長ったらしい挨拶をし始めた。
地獄の入学式が終わった後、それぞれが教室へ向かい、席と担任の教師の確認をした。
「よっす、今日からお前らの担任になった田中だ。たっちゃんって呼んでもいいぞ!俺が許可する!」
ほぼ話聞いてなかったけど、こんな内容だった気がする。
どうやらこの先生は人気があるようで、20代くらいの若い先生だ。
「っしゃぁ!!当たり引いたぜ!」
すぐ後ろから大声が飛んできて、肩をすこしだけビクつかせる。
思わず後ろを見ると、茶髪が印象的で、いかにもやんちゃそうな見た目の男子が立ち上がっていた。
「お、分かってんじゃねえかお前!名前はー...祢津 颯斗か。よし、評価3上げといてやる。」
「いぇあ!やったぜ!」
「でも人が話してるときに立ち上がるのはよくないな。3減点だ。」
「えぇっ?!プラマイゼロかよぉ...」
そんなコントみたいな2人のやりとりに、教室が笑い声に包まれる。
「はいはい静かにー。今日は校内見学してさっさと帰るように───」
「ふわぁあ、やっと帰れるー。」
亜美が大きくあくびをした。
やっと長いオリエンテーションが終わり、各々が教室でリラックスしている。
「一緒帰ろーよひなた!家どこら辺?」
「え?えっとね...猫荻一丁目の...」
亜美に住所を教えていると、机から消しゴムを落としてしまった。
「あっ、落としちゃった。」
よいしょ、とイスからおりて消しゴムを拾おうとした。
その時だった。
「おい、落ちたぞ。」
す、と細い腕が視界にうつった。
「あっ、ありがとうございま...」
顔を上げた。
瞬間、風が吹いたかのような感覚を覚えた。
アップバッグの爽やかな髪。
垂れ目気味の優しそうな目。
薄い唇、日に焼けた浅黒い肌。
天日干しした布団みたいないい匂い。
...かっこいい。
「...おーい?大丈夫かお前ー?」
「はっ、はぃ!大丈夫です...」
この人と話してるだけで体温が上がる。
胸がドキドキする。
まさか、これって
「お、澄杜!ここにいたのかよー。」
「おう颯斗。なんか用か?」
「今日帰ったらサッカーしようぜ!」
「2人でかよ(笑)PKしかできねぇよ。」
はは、と笑いながら去っていった2人。
なにこの気持ち。
人生初めての、
まさか私、
恋しちゃった...?!
周りは見渡す限りの人、人、人。
今日は、高校の入学式。
会場である高校の体育館で、クラス別の出席番号順横一列で並んでいる。
後にクラスメイトとなるのであろう左隣の同級生をちらりと横目で見る。
顔が堅い。笑顔の”え“の字もない。
...緊張してるんだろうな
私も、人のこと言えないんですけど。
私たちが入学する「波桜高校」は、偏差値高めのちょっといい高校。
「2年生がヤバい」とか
「部活内のいじめがひどい」とか
いろんな闇深ーい噂を聞いた。
「まぁ、しょせん噂は噂っしょ!」
そうやってこれまで一蹴してきた。
そして、現在。
「誰も知ってる人がいないっ...!」
私は重度の人見知りなのだ。
うちの通っていた月陽中学校では、3つの小学校校区の児童が生徒として迎え入れられた。
1クラス45名。
この年の1年は、荒れに荒れまくっていた。
同じ小学校の友達と一緒のクラスにななれるかもしれないという一筋の希望に私は運命を賭け、なんとか仲のいい友達と一緒になれることになった。
ところが、その仲のいい友達が入学してからわずか1週間で転校。
1人ぼっちになった私は恋などするわけもなく、寂しすぎる中学校生活を送った。
「私は!高校生活は、輝かしい青春を送ってみたい!」
孤独に3年耐えた私は、こう決心。
地元で一番偏差値の高い波桜高校を受験するために猛勉強した。
結果、合格。
あまりの嬉しさに、私は1kg幸せ太りしたくらいだ。
そう、そうだよ!!
心に決めたじゃん!
輝かしい青春を送るって!!
このままじゃ灰色の思い出しかないって!!
せめて隣の人と喋ろうよ自分!
「ねぇ、君。」
「っえ?!」
左隣の人に突然声を掛けられた。
「さっきからすごく悩んだ顔してるけど、大丈夫そ?体調悪い?」
「へっ、あっ、いやっ大丈夫です...」
まさか、顔に出てたなんて。
「うわ、恥ずかしすぎて死にそう...」
「...っぷはははっ!ウケる!気付いてなかったの?!ふはははっ!」
けらけらと笑う隣の人。
でもその笑い方は決して嫌みとかそういう感情はこもってなくて、心から笑ってる、そんな感じがした。
「あー、おもしろ。笑った笑った...
あっ、ごめん名前言ってなかったね。
私、塗森 亜美っていうの。君は?」
「あ、そうなんだ。私は猫葉ひなた。よろしくね。」
「ひなたね、なるほど!んじゃ、よろしくね!」
「よろしく、亜美。」
1人目の記念すべき友達、ゲットだぜ!
それからは、ざわついていた会場を校長先生が静め、長ったらしい挨拶をし始めた。
地獄の入学式が終わった後、それぞれが教室へ向かい、席と担任の教師の確認をした。
「よっす、今日からお前らの担任になった田中だ。たっちゃんって呼んでもいいぞ!俺が許可する!」
ほぼ話聞いてなかったけど、こんな内容だった気がする。
どうやらこの先生は人気があるようで、20代くらいの若い先生だ。
「っしゃぁ!!当たり引いたぜ!」
すぐ後ろから大声が飛んできて、肩をすこしだけビクつかせる。
思わず後ろを見ると、茶髪が印象的で、いかにもやんちゃそうな見た目の男子が立ち上がっていた。
「お、分かってんじゃねえかお前!名前はー...祢津 颯斗か。よし、評価3上げといてやる。」
「いぇあ!やったぜ!」
「でも人が話してるときに立ち上がるのはよくないな。3減点だ。」
「えぇっ?!プラマイゼロかよぉ...」
そんなコントみたいな2人のやりとりに、教室が笑い声に包まれる。
「はいはい静かにー。今日は校内見学してさっさと帰るように───」
「ふわぁあ、やっと帰れるー。」
亜美が大きくあくびをした。
やっと長いオリエンテーションが終わり、各々が教室でリラックスしている。
「一緒帰ろーよひなた!家どこら辺?」
「え?えっとね...猫荻一丁目の...」
亜美に住所を教えていると、机から消しゴムを落としてしまった。
「あっ、落としちゃった。」
よいしょ、とイスからおりて消しゴムを拾おうとした。
その時だった。
「おい、落ちたぞ。」
す、と細い腕が視界にうつった。
「あっ、ありがとうございま...」
顔を上げた。
瞬間、風が吹いたかのような感覚を覚えた。
アップバッグの爽やかな髪。
垂れ目気味の優しそうな目。
薄い唇、日に焼けた浅黒い肌。
天日干しした布団みたいないい匂い。
...かっこいい。
「...おーい?大丈夫かお前ー?」
「はっ、はぃ!大丈夫です...」
この人と話してるだけで体温が上がる。
胸がドキドキする。
まさか、これって
「お、澄杜!ここにいたのかよー。」
「おう颯斗。なんか用か?」
「今日帰ったらサッカーしようぜ!」
「2人でかよ(笑)PKしかできねぇよ。」
はは、と笑いながら去っていった2人。
なにこの気持ち。
人生初めての、
まさか私、
恋しちゃった...?!