珍しく中条くんのクラスにやって来た。

 先生に中条くんへの届け物を依頼されてしまったから仕方なくだ。


 教室で見つけた中条くんは、女子たちに囲まれていた。

 人気があるのを目の当たりにして、あの中に突入しないといけないのかと考えると嫌になって来る。


「ねぇ、晴馬くん。今日の放課後一緒に遊ぼうよ」
「なんでだ?」


 なんでって答えがあるか?
 遊びたいから誘ってるのに対して、それはないよ中条くん。


「ねぇ、明日お弁当作ってくるから食べてよー」
「いやだ。何入れてるか分かんねぇし」


 率直な返事に、わたしの心が痛くなってくる。



 もたもたと教室の入り口で立ち止まっているわたしに、中条くんが気付いて立ち上がった。


「百合!」


 不愛想な顔が緩んで、こちらに向かってくる。

 明らかに顔にも声にも今までの対応とは違う感情がにじみ出ていて、わたしの頬が熱くなった。


「ちょっと、中条くん。こっちに来て」


 本当は届け物を渡したらそれでよかったのに、わたしは中条くんの手を引いて廊下に出た。