イミテーションはいらない

 委員会からの帰り道。

 教室に戻ってカバンを取れば後は帰るだけ。



 ようやく帰れる。まったく無駄な時間を過ごしちゃった。

 知らず知らず溜息が出る。


「おい」


 前から来た相手に気付かなかった。


「中条くん?」


 まさか見られただろうか。
 完璧いい子なわたしが嫌な顔してるとこ。

 いやいやきっと大丈夫。溜息吐くくらいなら、別にイメージダウンはしなさそうだし。


「おまえ、なんでそんなに無理すんだよ」
「……何のこと?」


 やだ、まさか本当に見られてた?


「とぼけんなよ」
「……だから、何のこと?」


 内心ヒヤヒヤしてる。まさかこんなに疑われるとは思わなかった。


「そういうつもりなら、こっちにも考えがある」


 突然中条くんはわたしとの距離を詰めて来た。

 いきなりのことで対応できず、後ろに後ずさる。


「どうしたの、中条くん」


 壁際に追い詰められて、ほとんど壁ドン状態だ。

 中条くんの、綺麗だけど不愛想な顔が近づいてくる。


「嫌なら突き飛ばすなり罵るなりしてみろよ」
「は?」


 意味わかんない。

 でもそんなわたしの思考は一瞬で吹っ飛ばされる。


「っんん!」


 いきなり唇に柔らかいものが押し付けられる。


 えっ、なんでキス……してるの?


「んんん」


 一生懸命中条くんの体を押すけれど、まるでびくともしない。


 なんでわたしがこんな目に。

 ふつふつと怒りが湧いて来て、ぐっと右手を握り、えいっと腹を殴った。



「ぐっ」


 うめき声を上げながらようやく中条くんは離れてくれた。


「最っ低! 信じられない! あり得ない!」


 感情のままに罵ると、中条くんはニッと笑う。

 なんで笑うわけ? こっちは怒ってるのに。


 パーにした右手を振り上げて中条くんの頬にもみじを残してやろうとすると、簡単に止められてしまった。


「あぁ。そういう態度の方がいいぜ」
「んんっ」


 おまけとばかりに再びわたしの唇を奪い、その後は離れていった。


 じゃあな、って感じで手で挨拶をしていったのが憎たらしい。