先生たちのあいだでもわたしたちのことは噂になっているらしい。

 そのせいで、わたしは中条くんに接触しなければいけないことが増えた。



 別に付き合ってるわけじゃないのに、わたしはまたもや中条くんに届け物をさせられる。


 中条くんのクラスにやって来て、わたしは憂鬱になりながら中に入った。

 前のときは冷たい中条くんを見て、なんだか嫌な気持ちになってしまったから今日もそうなるんじゃないかって思ってしまった。



 けど、現実は違った。


 中条くんは穏やかな微笑みを浮かべていた。

 大きな口を開けて笑う笑顔じゃないけど、不愛想とは違う。


「でさ、中条くんにお願いがあるんだけど」
「ん。オレにできることなら聞いてやるよ」


 無下に断ることなく、ちゃんとコミュニケーションが取れている。
 随分な成長だ。

 これがわたしの影響だと思うと誇らしいはずなのに、どうしてか心が晴れない。


 嫌だ。
 優しく対応してあげて欲しかったはずなのに。


 嫌だ。
 優しく対応しないで欲しい。


「……中条くん」


 サッサと用を済ませてしまおうと中条くんに近づいてノートを渡す。


「じゃあね。それだけ」


 中条くんの顔が見れなかった。