歩きやすいように足元はエンジニアブーツにして、バッグは財布とスマホなど最低限のものが入るショルダーバッグを選んだ。

 雑誌で秋のトレンドやおしゃれに見える着こなしなどを参考にしてコーディネートを組んだけど、本当に正解かどうかはわからない。

 髪も京ちゃんに教えてもらった通りに緩くサイドを捻って止め、黒髪でも重く感じず垢抜けた印象を目指した。

 この街に馴染むとまではいかなくても、浮いてないといいなと願う。そうでないと、一緒に歩く楓先輩に恥ずかしい思いをさせてしまうから。

 スタイリング剤で束感を出し、鏡の前で必死に作った前髪をいじりながら無駄に速まっている鼓動を落ち着かせていると、改札の奥に楓先輩を見つけた。

 私との距離はおよそ二十メートル。人混みの中、彼はバッグから定期を取り出そうとしていて横顔しか見えなかったのに、それでも先輩だとすぐにわかった。

 だって私の目には、楓先輩だけがキラキラと輝いて見えるから。