それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 隣で会話を聞いていた真央さんが「夕食の準備しますね」と立ち上がってキッチンへ向かうと、その背中を見送ったお父さんが少し居住まいを正して「進路は考えてるの?」と尋ねた。

 あぁ、彼女は気を遣ってくれたのかと気付く。また私の心に罪悪感が根付き、ギュッと胸が苦しくなった。

 ふたりとも、私のことを考えてくれているのが痛いほど伝わってくる。

 それを見て見ぬふりをしながら、進路へ思考を切り替えた。

 京ちゃんは明確に美容師になりたいという夢を語っていたけれど、私にはなりたい職業や夢がない。

 お母さんを亡くし、日々の生活を送ることに必死だった私は、将来を夢見ることすらしていなかった。

「ううん。まだやりたいこととか考えたことなくて。ぼんやり大学には行くんだろうなって思ってるくらい」

 正直に答えると、お父さんは申し訳なさそうに頷いた。

「菜々には今までたくさん苦労かけたもんな。これから、いくらでも考える時間はある。お父さんは菜々がやってみたいと思うことなら反対はしないから、今は視野を狭めないで、いろんな選択肢を持てばいいよ」