それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 いつも以上に人が少なく、今までは快適だと感じていた静かな空間が急に虚しく思えて、私は珍しく下校時間よりも前に帰路についた。

 家に帰ると、まだ十八時前なのにお父さんの革靴がある。

 いつも通り「ただいま」と玄関をあけ、階段下にバッグを置こうとしてやめる。

 洗面所で手を洗ってからリビングに顔を出すと、ソファに座っているお父さん達が揃ってこちらに「おかえり」と笑顔を向けてきた。

 それに同じような笑顔を返すことはせず、「ただいま」と小さく頷くだけ。

 半年も経てば、こうしてお父さんの隣にお母さんではない人がいるのに慣れてくる。

 その〝慣れ〟がお母さんを裏切っているような気がして、この家では笑うどころか、息もうまく吸えない。

「……お父さん、今日は早いね」
「うん、たまにはね」
「ちょうどよかった。これ」