喉の奥がキュッと絞られて、心臓がさっきまでとは違うリズムでドクドクと脈打っているのがありありとわかるくらい高鳴って、なんだか息が苦しくなったのを覚えている。
事故にならなくてよかったとホッとしたのとも、これまで心の中を占めていた苦しくてやりきれない感情とも違う、また別の言葉にならない感情だった。
『ごっごめんなさい……っ!』
恥ずかしくて、申し訳なくて、情けなくて、ただ謝るしかできず、私はお礼を言うのも忘れて、その場から走って逃げてしまった。
その二ヶ月後、高校に入学した私は、助けてくれた彼が学校で絶大な人気を誇っている佐々木先輩だと気付き、お礼を言わなくちゃと思いながらも、いまだにただ遠くから見るしかできないでいる。
いつも人の中心にいて、とても声なんてかけられないし、もしも先輩があの時の自分の醜態を覚えていたらと思うと、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
先輩の優しさや、握られた手の温かさを忘れられない。けれど近くでしゃべったりしたら、緊張と羞恥心で心臓が破れてしまうかもしれない。



