『誰だって隠したいことはあるし、言わなくていい事実だってあるはずだから』
あの言葉は、もしかして先輩自身にも当てはまるものだった?
触れそうになった時にあれだけあからさまに避けながら、先輩はなにも言わずに誤魔化した。だったら、私は気付かないふりをしたままの方がいい。
そう納得させて結論を出した自分に気付き、ガッカリする。
実際は納得なんてしていないのに。気遣うフリをして、本当は迷惑がられるのが怖いだけ。
家でも同じ。再婚に納得したわけじゃないのに、声に出して反対する勇気を持てないまま、自分がどうしたいのかを完全に見失っている。
「こら。上の空だな」
「あっ、ごめんなさい」
またしてもぼうっとしてしまい、楓先輩が困ったような顔をして笑う。
いけない。こんな所でまで家のことを考えている場合じゃない。せっかく貴重な時間を割いて教えてもらっているんだから、ちゃんとしなくちゃ。



