それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 そう言って京ちゃんと座る場所を交換し、日野先輩に向けてしたり顔を向けている。

 その意図を汲み取った日野先輩は、少し頬を赤くしながら隣に座った京ちゃんに話しかけた。

「じゃあ、橘さん。苦手な科目ある?」
「え、えっと、私は英語が苦手で……」
「じゃあ英語やろっか」
「いいんですか?」
「うん。俺、帰国子女だから、一応英語は得意」
「えっ! 帰国子女?」

 たどたどしく会話をしている様子を盗み見ていると、京ちゃんが驚きに大声を出して、咄嗟に自分で口を塞いでいる。

「ご、ごめんなさい。つい驚いて……」

 日野先輩や、周囲の机の人にもぺこぺこ頭を下げる京ちゃんが可愛くて、思わずふふっと笑みが溢れた。

「菜々」

 楓先輩に名前を呼ばれ、ハッと我に返る。

 そうだ、せっかく先輩が教えてくれるんだから、ちゃんと集中しないと。