「本音と建前って、みんなあると思うんだ。本心ばかり口に出すわけじゃない。テキトーに誤魔化したり、噓をついたりする」
支離滅裂な私の話を静かに聞いてくれた楓先輩の瞳に呆れの色はなく、ただ包み込むような優しさだけがある。
ひとつひとつ、ゆっくりと言葉を選ぶようにして話す彼の瞳を、私はじっと見つめていた。
「でも、それが全部悪いとは思わない。誰だって隠したいことはあるし、言わなくていい事実だってあるはずだから。言いたくないことを無理に言う必要はないし、それを暴く権利なんて誰にもない」
月明かりに照らされた先輩が、どこか辛そうな顔をしてそう言った。
それに、と続ける。
「菜々は、相手を傷つけるような噓は言わないだろ」
普段寡黙でクールと言われている楓先輩が、私のために真剣に考えてくれている。
それだけじゃなく、今日初めて話したはずの先輩が、私のなにもかもを知っているように断定した。
どうしてだろう?



