あ、そっちのことか、とホッとしかけて、慌てて京ちゃんに伝えようと言葉を選ぶ。
噓はつきたくないけれど、だからって全部を正直に打ち明けるのは難しい。
私を信頼してなんでも話してくれる京ちゃんに、どうしたらうまく伝わるだろう。
「あのね、たしかに楓先輩のこと気になってはいるけど、まだ恋愛っていう意味じゃなくて。だって私は京ちゃんみたいに美人でもスタイルがいいわけでもないし、私なんかが楓先輩を好きになっても、その、叶わないっていうか……」
先輩を好きじゃない理由を並べてみる。声に出すと、なんて卑屈なんだろう。好きになっても報われないから、好きにならないようにしているなんて。
だけど、実際に恋をするのに恐怖を感じているのも本心だ。
それは楓先輩に対してだけじゃなく、恋愛そのものに対する不信感みたいなもの。
両親はあれだけ仲がよかったのに、お母さんが死んで七年経った今、お父さんはもう別の人と結婚している。
嫌いになったわけじゃなく、今も毎日お母さんの仏壇に手を合わせながら、そのあとすぐにあの人の作った朝ごはんを笑顔で食べている。



