「おかえりなさい」

彼女は真央さん。お父さんの再婚相手で、私の義理の母になった人。

今年の三月、私の中学卒業と同時に再婚し、高校進学とともに引っ越して、この家で父と彼女と私の三人で暮らしている。

実の母は、私が小学校三年生の頃に病気で亡くなった。

膵臓がんと診断された頃には手遅れで、最終的には身体のいろんなところに転移し、手術もできないままに逝ってしまった。

お母さんが亡くなった時の記憶は、正直ほとんどない。

そのくらい悲しくて苦しくて、日常というよりは世界が崩れてしまったような感覚だった。

喪失感よりも恐怖が先に立ち、もうこの世に大好きなお母さんがいないのだという現実を、小学校三年生の私は受け止めきれなかった。

毎日声が枯れるまで泣き、帰ってきてほしいと必死に願った。

誕生日プレゼントも、サンタさんからのプレゼントも、お年玉もいらない。ちゃんと宿題をするし、テストも百点取れるように頑張るし、家事のお手伝いだってする。誰よりもいい子になる。

だから神様、お母さんを私に返して……!