それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 その男の子が、楓先輩だったということ……?

 絶句して見つめると、先輩は小さく笑って頷いた。

「菜々は、いつも俺から逃げていく」
「う……ごめんなさい、本当に」

 身に覚えがありすぎて項垂れると、繋いでいる手と反対の手がぽんぽんと頭を撫でた。

「きっと同じように大切な家族を亡くして、それを乗り越えた菜々の言葉だからこそ、俺の心に刺さったんだと思う。おかげで少しだけ前向きになれた。それに、本音と口にする言葉が違う人間ばかりだと悲観してたけど、菜々は違った。余計なことを言ってしまったと謝りながら、心の中で俺にエールを送ってくれた」
「エール……?」

 心の中で何を思っていたかなんて、全然覚えていない。

 私が首をかしげると、先輩が当時を思い出すように目を伏せた。