それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 そんな私の話を、真央さんは時々質問を挟みながら聞いてくれて、私の気持ちを理解しようと真剣に向き合ってくれているのがわかった。

 最後に、ほんの一時間前にお別れのメッセージを送ったと告げて話を終わらせると、彼女は目を細めて悲しそうな顔をした。

「……そっか」

 私の背中に温かい手を添えたまま、真央さんが机の上の方へ視線を向けた。そこにあるのは八年前の家族写真だ。

「思ってること、正直に打ち明けてくれてありがとう。私も、全部正直に話すね」

 穏やかな落ち着いたトーンで語ってくれたのは、これまで聞いてこなかった真央さんの本音。

 お父さんとは二年ほど前に仕事を通じて知り合い、少しずつ親しくなったらしい。

「浮気とか二股と思ったことはないよ。菜々ちゃんのお母さんが生きていたら洋司さんは私と結婚しなかったのは確かだし、私も洋司さんをそういう対象として見ることはなかったから。そこはお互い様かな。ただ罪悪感というか、引け目を感じることは……正直、少しだけあるかな」