「菜々ちゃん、好きな人がいるのね?」
優しく問われて、私は抗うことなく素直にこくんと頷いた。
「その人には、亡くなった大切な人がいるの?」
「……二年前に、恋人だった女の子が事故で亡くなっているんです。一緒の高校に行くために、勉強を教えたりしてたって聞きました。命日には学校を休んでお墓に会いに行ってるし、きっととても大切な相手だったはずなのに……」
「菜々ちゃんは付き合ってるの? その彼と」
少し迷ったけれど、楓先輩との出会いを話した。
高校入学前、事故に遭いそうなところを助けてもらった人と、入学後に再会したこと。友達の恋を応援していたのがきっかけで仲良くなり、告白されたこと。その後、亡くなった幼なじみの女の子と付き合っていたと人伝に知ったこと。
もちろん先輩の力については伏せたけれど、保健室での会話も覚えている限り詳しく話した。
原口希美さんをお母さんに重ねてしまって苦しくなったり、自分はその人の代わりで二番目なんじゃないかって感じたり、楓先輩に亡くなった大切な人を蔑ろにしてほしくないと思ったり、自分勝手で矛盾だらけの感情を、拙いけれど言葉にしていく。



