「菜々ちゃんは、再婚に反対だったんだね」
「……すみません」
「謝らないで。もし嫌じゃないなら、思ってること聞かせてほしい。どんなことでも受け止めるから」
真っ直ぐにこちらを見つめる真央さんの眼差しに促され、私はなるべく感情的にならないように、でも心の中を正直に伝えようと口を開いた。
「お父さんとお母さんはすごく仲がよかったんです。お母さんの誕生日にはお花を買ってきてたし、毎年夏休みには決まって三人で旅行してた。病気が見つかって入院してた時は、会社を休んでつきっきりで看病したし、亡くなった時は心配になるほど痩せて憔悴してました」
正面に座っている真央さんは、私の話を頷きながら聞いてくれている。
「お父さんは毎日お母さんの仏壇に手を合わせてるし、命日とお盆だけじゃなくて、誕生日にもお墓に真っ白なダリアの花束を持って行ってる。それは、まだお母さんを忘れてないからだと思います」
「うん。私もそう思うよ」
真央さんにとっては辛いであろう話を聞かされても、彼女は優しく微笑んでいる。
それが悲しくて、切なくて、自分のことのように胸が痛い。



