その後、いつの間にか泣き疲れて眠り、目が覚めると、部屋の時計は朝の五時半を指していた。まだ日が出ていないため、カーテンの外は薄暗い。
窓を開けると、秋から冬に移り変わる澄んだ空気の匂いがする。泣き腫らした目に冷たい風が心地よく、私は大きく息を吸い込んだ。
気が変わらないうちに送らないと、と自分に喝を入れて、私は机に置きっぱなしにしていたスマホの電源を入れた。すると、未読のメッセージを知らせる通知がいくつも届く。
【無事に家についた?】
【体調はどう? 電話してもいい?】
何度も同じようなメッセージをくれていた。私を心配する楓先輩の顔や声音が思い浮かび、決意が鈍りそうになる。
ぎゅっと目を閉じ、心を落ち着かせながら、ゆっくりと文字を打ち込んでいった。
【もう、ふたりきりでは会いません。今までありがとうございました。】
これが、私が出した答え。



