それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 私は夕飯も食べず、部屋からほとんど出ないまま過ごした。その間、色んなことを考えた。

 両親のこと、真央さんのこと、原口希美さんのこと。それから、私と楓先輩のこれからのこと……。

 午後七時を過ぎた頃、玄関の開く音でお父さんが帰ってきたのだとわかった。私は布団の端をぎゅっと握りしめ、膝を抱えて目を閉じる。

 きっと、今頃真央さんから私が学校を早退したことや、話しかけても返事がないことを聞いているだろう。

 これまでも真央さんには褒められた態度はとっていないけど、ここまであからさまに避けたり無視をしたりすることはなかった。

 罪悪感もあるし、こうして引きこもってなにが解決するわけでもないことは、私だってよくわかってる。

 ただひとりで冷静になる時間がほしい。そう思っていたのに。

「菜々、ただいま」

 コンコン、とお父さんがノックしながら話しかけてくる。