それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 先輩から秘密を打ち明けられた時、気味が悪いとか、嫌悪感なんて一切ないと言ったのに噓はない。

 今だって、先輩や先輩の力に対する嫌悪感なんて全くない。あるのは、ただ自分の醜い感情に対する嫌悪感と羞恥心だけ。

『触らないで』なんて、絶対言ってはいけなかったのに。

 どれだけ傷つけてしまっただろう。実の両親にさえ抱きしめられた記憶がないと話す先輩は寂しげで、これまでたくさん嫌な思いをしてきたに違いないとわかっていたのに。

 それでも先輩は、私に対して怒りを見せることなく、きちんと話してほしいと優しく声をかけてくれた。

 身勝手だけれど、今はその優しさがひどく苦しい。その優しさは、私だけのものではないと思ってしまうから。