それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 だって、いずれ知ることになった事実だから。楓先輩には亡くなった恋人がいたことも、その人を忘れられないと日野先輩に話していたことも、全部。

 家に帰りたくはなかったけど、他に行くところもないし、昨日みたいに公園で時間を潰して風邪を拗らせるのも得策ではない。

 結局まっすぐに家に帰り、私は黙って玄関から直接二階の自室へ向かう。制服を脱いで部屋着に着替えると、保健室の時と同じように頭から布団を被った。

 すると、すぐにコンコンと控えめなノックの音がする。

「菜々ちゃん? おかえりなさい、どうしたの? まだ学校が終わる時間じゃないよね? 具合悪いの?」

 真央さんが扉越しに声をかけてくれたけど、ひと言も返さないまま無言を貫いた。失礼な態度をとっているのはわかっているけれど、答えられる余裕がなかった。

 楓先輩に言ってはいけない言葉をぶつけてしまったことが、自分でも許せない。