だって忘れられないんでしょう? 学校を休んで会いに行くくらい大切な人なんでしょう?
そう思ってしまう醜い自分がいる。なんて矛盾した、自分勝手な考えなんだろう……。
突然泣き出した私を前に動揺した先輩が、こちらにそっと手を伸ばした。
「菜々? もしかして、体調悪くなって――――」
「触らないで……っ!」
甲高い悲鳴のような声が、シンと静まり返った保健室に響く。
触れられて、最低な考えを知られたくなかった。若くして事故で亡くなっている人に対して、こんなにも醜く嫉妬している自分を知られたら、嫌われてしまうかもしれない。
だけど、叫んですぐに後悔した。目の前の楓先輩が弾かれたように手を引き、どうすることもできずに固まっていたから。
「ごっ、ごめんなさい、違う……ごめんなさい……」
言ってはいけないことを叫んだ。ただ自分を守るために。



