それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 ――――あぁ、どうして…………。

 目の前が真っ暗になった。そのまま頭を抱えて崩れてしまいそうで、ぎゅっとキツく目を瞑る。

 言っちゃった。言わせてしまった。

 はるばる九州のお墓まで会いに来た楓先輩に新しい彼女ができたと告げられ、原口希美さんはなにを思っただろう。

『彼をとらないで。裏切らないで……』

 夢で何度も聞いたか細い声が脳内にこだまする。

 苦しい。悲しい。でもきっと原口希美さんやお母さんの苦しみは、こんなものじゃなかったはずだ。

 まだ生きて恋をしていたかったのに、病気や事故によって命を奪われ、さらに大好きな人まで他の人にとられてしまうの?

 そんなこと、許されていいの……?

「いつか、希美に菜々を紹介し……菜々? どうした?」