それでもキミと、愛にならない恋をしたい


「九州だから、どうしても学校休まないと行けなくて」
「実は……少しだけ聞きました。日野先輩から……」

 事情を聞いたのに知らないふりを貫くなんてできなくて、私は正直に打ち明けた。

「聞いたって、希美のこと?」

 先輩が親しげに『希美』と呼んだ。たったそれだけで、胸がざわざわと不快に騒ぎ出す。付き合っていたのだから当然なのに、胃が引き攣れるように痛んだ。

 それを押し隠し、私は俯いて小さく頷いた。

「午前中、連絡がつかなかったから心配で……。そしたら、京ちゃんが日野先輩に連絡してくれて。あの、ごめんなさい。勝手に聞き出すようなことをして。日野先輩は他人から聞くようなことじゃないって言ってくれたんですけど、私が聞きたがったから……」
「いや、別に隠すことじゃないからいいよ。ごめん、機内でスマホの電源切って、たぶんそのままにしてた」
「幼なじみ、なんですよね。九州には、ご家族で?」
「いや、俺ひとりで行った。両親は仕事があるし、俺もひとりの方が気楽だし」