すると、先輩がグッと唇を噛み締め、私から顔を背けてしまった。
「せ、先輩……?」
どうしよう。なにか失礼だったかな。やっぱり自分から人の心の中を読むなんてしたくないのかな。
きっとこれまでたくさんの人の感情を浴びてきて、中には素敵な本音や嬉しい言葉もあっただろうけど、そればかりじゃないはずだ。
さっき先輩もうんざりしてると言っていたのに。あぁ、どうしよう。失敗した!
「ご、ごめんなさい。嫌ですよね。違うんです、忘れてくだ――――」
焦って差し出した手を顔の前でブンブン振り、直前の発言を訂正しようとした。その時。
楓先輩が私の手首を掴み、滑らせるように手を包み込んだ。ひんやりとした手は、私よりひとまわり大きい。
突然のことにハッと息を詰めていた私は、なんとか浅い呼吸を繰り返す。触れ合う指先から、徐々に熱が広がっていく気がした。



