それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 どうしたら嫌じゃないと伝えられるだろう。たしかに心の中を読まれたのは単純に恥ずかしいし、あのぐちゃぐちゃな感情をどう思われたのか不安はある。けれどそれを不気味だとも気持ち悪いとも思わない。

 口下手な私がどう頑張って言葉にしたら、先輩に本当の気持ちが伝わるだろうか。

 そう逡巡して、ふと気付いた。

 窓の外は日が沈み、空は紺色の夜が訪れ、海面には太陽のオレンジ色が溶けて広がっている。それを観覧車の頂上に近い場所から見下ろしながら、私はある提案をした。

「あの、先輩。手を……繋ぎませんか?」

 定位置である私の右側に座る先輩に右手を差し出すと、楓先輩は驚きに目を瞠った。

「菜々、なに言って……」
「先輩も知っての通り、私は言葉でうまく伝えるのが苦手なので……これなら、わかってもらえるんじゃないかなって」

 過去に心の中を読まれたのを嫌がっていないのも、先輩を不気味とも気持ち悪いとも思っていないのも、あの日のように繋いだ手から伝わればいい。