それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 あんなぐちゃぐちゃな感情なんて聞きたくなかったに違いないのに、それでも先輩は手を振り払うことなく、私が泣き止むまでずっと寄り添ってくれていた。

 それは間違いなく彼の優しさだ。

 他人に触れないように一線を引いているのも、四人でテスト勉強していたファミレスで触れそうになった指を咄嗟に引いたのも、勝手に心の中を読んでしまわないようにという先輩の配慮と優しさに違いない。

 それなのに先輩が謝るなんて。そんなの必要ないのに。

「あの日、菜々はかなり動揺してたみたいだったから、まさか一緒にいたのが俺だって気付いてるとは思わなかった。この力を知ってるのは両親と日野だけだし、今後誰かに言うつもりもなかった。でも、『ずっと手を握っていてくれて、ありがとうございました』って、さっき菜々が言ってくれたから……黙ってその感謝の気持ちを受け取るなんてできなかった。あの繋いだ手から、俺には菜々の感情が全部聞こえてたんだ。そんなの不気味だし、気持ち悪いだろ。感謝なんて、しなくていいんだ」

 もう一度「ごめん」と頭を下げた先輩を見て、軋むように胸が痛んだ。もしかしたら、ご両親からそんな風に言われたりしたんだろうか。