「……ごめん。勝手に心の中を覗かれるなんて、嫌に決まってるよな。ほんとにごめん」
私の表情をどう受け取ったのか、先輩は懺悔するように頭を下げた。
「ちっ違います! 謝らないでください! 嫌だなんて思ってないです!」
「嫌じゃないわけないだろ。橘さんにも言えなかったのって、お父さんの話じゃないのか」
「そうですけど……でもそうじゃなくて!」
私は必死に思考を巡らせる。
先輩は物心ついた頃から触れた人の心が読める能力を持っていると言った。幼い頃から他人の本心が聞こえてしまうなんて、一体どれだけの苦痛があったんだろう。両親から抱きしめられた記憶すらないと淡々と話した先輩の横顔は切なくて、胸が締めつけられた。
どうしてそんな力が先輩に備わっているのかはわからないけれど、それは決して先輩のせいではないし、私の心の中を読んだことについては、トラックから助けてくれた時に起こったアクシデントで、先輩にとっては不可抗力だ。
「あの日、私は本当にショックで……きっとあのままひとりにされていたら、ちゃんと家に帰れなかったかもしれない。先輩が私の心を読んでそばにいてくれたから、私は少しだけ冷静になれたんです」



