それでもキミと、愛にならない恋をしたい


 本当ならあまり人に言いたくない話だし、先輩にも、あの時の中学生が私だと知られたくない。

 だけど、あの日私はお礼も言わずに走り去ってしまった。

 事故になりそうなところを助けてもらって、おまけに泣き続ける私のそばにずっといてくれた優しさに対し、失礼極まりない態度だ。

 やっぱり、あの時の彼が楓先輩だと気付いた以上、きちんとお礼をするべきだよね。

 私は勇気を振り絞って先輩の質問に答える。

「先輩はクールに見えて……赤信号に気付かず轢かれそうになった子を助けたり、その子が泣き出したらずっと手を握ってあげたりする、優しい人です」

 先輩は私を見て驚いた顔をしている。

「今年の二月、高校の近くの横断歩道で車に轢かれそうな中学生の女の子を助けましたよね。あれ……実は私なんです。ずっとお礼を言えなくて、ごめんなさい」

 高校の合格発表の翌日、お父さんから紹介したい女性がいると言われた。