松陰がお盆にポテトチップスとジュースを持ってやってきた。
 「あ、松陰」
 と、トオル。
 松陰は笑った。
 「は」
 まことは松陰を見た。
 松陰がお盆をちゃぶ台に置いた。
 トオルはポテトチップスを取った。きりせんからやぶった。それをちゃぶだいに置いた。
 「一緒に食べよう」
 と、トオルはまことに言った。
 「・・・・・・」
 「先に話しますか」
 と、松陰。
 「う、うん」
 と、まこと。
 「あのう、私は中学にあがるんだけど」
 「俺もな」
 と、トオル。
 「父が制服を買ってきて」
 「えええええ、そういや俺たちの通うことになってる中学って女子セーラー服だっけ」
 と、トオル。
 「・・・・・・」
 まこと。
 「そうだよな。やった、まことのセーラー服姿見られるぜ」
 「・・・・・・」
 松陰はまことをみやった。まことのほほを涙がつたった。
 「お、おいどうしたんだよ。父ちゃんにぶん殴られた?」
 と、トオル。
 「それが、父は、学ランを買ってきたんだ」
 「ええええええええ」
 と、トオル。
 松陰は困ったような顔をした。
 「まさかここまでとは。お前のおやじ、ちょっとあれだな」
 「ははははは」
 と、松陰。
 「え」
 と、まことは松陰を見た。
 「あ、これは失礼しました」
 まことは松陰を見つめている。
 「あ、いやあ、まこと君のお父さんにも困ったものですねえ」
 まことはうつむいた。