父親は店の奥へ行った。靴を脱ぎ、あがった。まことも続いた。
 父親は階段を上った。二階に部屋があるのだ。まことも続いた。まことはうきうきしていた。
 二階。廊下が続いている。右側にドアがあり、突き当りにドアがある。
 父親が歩いて行く。右側のドアを通り過ぎる。
 「え、おやじ、おやじの部屋にあるんじゃねえの」
 父親はだまっている。
 「お、おい、そっちは私の部屋だぜ」 
 「・・・・・・」
 「お、おい、私の部屋に入ったんじゃあるめえ」
 父親は、ドアのドアノブに触った。
 「おい!」
 と、まことは大声をあげた。
 「こらこら、年頃の娘の部屋にはいんじゃねえ」
 父親が振り向いていった。
 「ほほお、そうか」
 「え」
 「おぬしもそろそろ年頃か」
 「え」
 「まあ、年頃の男はそういう本を隠してたりするからなあ」
 「て、てめえ、やっぱり男扱いか。そういう本てどういう本だよ」
 「なんていうかあ、女性の写真とか」
 「ああ、なんだよそれ」
 まことは父親につきをいれた。父親は軽くよける。
 「さては図星じゃな」
 「て、てめええええええ」
 「お前も色気づいたのう」
 まことはつきをいれつづける。
 「制服着たくないのか」
 まことはつきをやめた。
 「そうそう。憧れのセーラー服」
 父親は微笑んだ。
 「じゃあ、見せてやろう」
 といって父親はドアノブに手をかけた。ドアを開けた。父親が中に入った。まことが続いた。
 そこでまことが目にしたのは、壁にかけられた学ランだった。まことは止まった。え。なにこれ。やっぱりだ。
 「まことよ。よかったな。やっと学ランが着られるのじゃ。お前も男じゃなあ」
 まことはこぶしを握り締めた。涙がほほをつたった。
 「ほお、そんなにうれしいか。よいか、男でも泣いていいのじゃぞ」
 「こんなこったろうと思ったぜ」
 と、まこと。
 まことは振り返って、廊下をかけた。
 「どうしたまこと」