SENTIMENTALISM



「はい」

そう言ってドアから顔をだしたのは玲だった。

二週間ぶりに見た玲は変わらない。

眩しい金糸の髪も
鋭く光る青い瞳も
日本人離れした顔立ちも
面倒くさそうな声も。

あたしは、変わらない玲を見て緊張の中で嬉しさを感じた。

玲はあたしを見たとたん驚愕したように目を大きく見開いた。


「………りく…」

「……来ちゃった…。梨紗から色んなことを一気に聞いて、確かめたかったから……玲、ユキノ ヒトミってわかる?」

その名前をきいて、滅多なことがないと顔色を変えない玲が青白くなる。
しかし、すぐに落ち着きを取り戻した。

「この場所で何があろうと、お前には関係ないことだ」

玲の冷淡な言葉に泣きたくなるのをグッとこらえる。

ここで引き下がったら、昔の自分と同じだ。
失うのをぼんやり見ていた昔の自分。


玲がドアを閉めようとするのを、あたしはドアに手をかけて制した。

玲は怒ったように眉をしかめる。

「嫌だよ!あたしはやっぱりこの場所にいたいの!玲は全部忘れろっていうけれど、そんなの無理だよ!だって、あたしの二ヶ月間は確かにあったんだよ?!あたしは、みんなと一緒にいたいよ!もうカヤの外はいやだよ!忘れたくないよ!」