SENTIMENTALISM



「……りくっ!」

梨紗が息をきらしながらリビングの扉を勢いよくあけてはいってきた。

あのオジサンとはどうなったか分からないけれども、少なくともあたしが発狂して逃げてきたから彼女もオジサンとそれどころじゃなくなったのだろう。

あたしを追って走ってきたらしい。


「……梨紗…お前が誘ったのか?」

慧斗の低く落ち着いた声が部屋の中に妙に大きく響いた。

普段陽気な慧斗のいつもと違う迫力に梨紗の顔が一瞬にして強張る。

あたしの心臓も破裂しそうなくらいにバグバクと高鳴っているのが、痛いくらいに分かる。


「……そうなんだな」



慧斗の重く突き刺さるような一言に、梨紗はきっと無意識だろうけれど二、三歩後ずさりをした。
そして追い詰めるように慧斗が梨紗にゆっくり近付いて、顔と顔がくっつきそうな距離になる。


「……お前が女じゃなかったら殴るところだ」