梨紗に良い噂がないことは薄々知っていた。 でも、あたしが信じたいのは 不安定な噂よりも 揺るがない存在を持つ梨紗そのものなのだ。 「今日はどうするの?」 行き交う人に混じりながら、度々立ち止まりショーウインドーを眺める梨紗に尋ねた。 「うーん。あんまお金ないんだよね。この前使ったばかりで」 そういえば、おとつい梨紗は両手いっぱいにショップ袋をさげて溜まり場に帰ってきたものだから慧斗と玲を呆れさせた。 唯一、綾子さんだけが梨紗の好きにすればいいのよと笑っていた。