私、桐生莉亜(キリュウリア)。
夏羅中2年生。
今は妹の莉衣と一緒にダンススクールに行く途中なんだ!
「莉亜、今日1級のテストだよ…!」
「そーだね…莉衣はきっと受かるよ」
莉衣は私と比べ物にならないくらいダンスが上手いから。
「そんなことないよ〜!莉亜は歌上手くて羨ましいなぁ…」
そう言って笑う莉衣に、苦笑いしか返せない。
私は運動音痴だから…ダンスなんてむいてない。
スクールのあるビルに着いて、中に入る。
慣れた手つきでエレベーターのボタンを押す。
莉衣の横顔をチラリと見ると、鼻歌でも歌い出しそうな自信に満ち溢れたニコニコ顔。
はぁ…。
莉衣はいいな。
スクールの先生に期待されていて。
スクールの友達と仲が良くて。
みんな莉衣には1目置いている。
私にはあぁ莉衣ちゃんの姉ね、くらいにしか覚えられていない。
人見知りだから友達も少ないし…。
私ってほんとダメだなぁ…。
はぁっとため息をついて、スクールのドアを開けた。
「こんにちは〜っ!」
「あら莉衣ちゃん!いらっしゃい。…あぁ莉亜ちゃん、いらっしゃい」
こんなふうに、スクールの先生…秋葉紗彩(アキバサアヤ)先生にも最近避けられているように感じる。
対応に差があると言うか…。
私の名前を呼ぶときだけ、投げやりな感じ…。
モヤモヤと心の中にモヤが広がっていく。
そんな私のモヤを晴らすのが。
「こんにちは」
「ちわーっす」
この2人。
三空陸(ミソラリク)と七瀬伊織(ナナセイオリ)。
陸はRIKUという名前でアイドルグループを結成しており、現在大ブレイク中!
伊織はナナというアカウント名でダンス動画を投稿中、こちらも大バズり中。
「莉亜!莉衣!やっほー!」
「陸元気すぎ…朝生放送じゃなかったの?」
「ううん、あれはしゅーろく」
まさにアイドルの会話…実際アイドルなんだけど。
「あらあらまあまあ陸くんに伊織くん!今日もお疲れ様ー!」
そう言って秋葉先生がポカリのペットボトルを2人に差し出した。
…秋葉先生は、こーゆー顔面偏差値で人を判断することが多い。
いわゆるクズだ。
イケメンのアイドルにカッコイイYouTuber。
3人は見事に秋葉先生の心を掴んでいて。
羨ましいなって思う。
荷物を置いて、レッスン室に入る。
「あ!莉衣!」
「あ〜っ、ゆっきー!」
「おいおいあたしを忘れんな?」
「忘れるわけないよ!くるみーんっ!!」
「うぉわっ!?離れろ…!」
楽しそうにじゃれている莉衣達を見ていると、自分が画面外で眺めている何かのドラマかと思ってしまう。
じーっと3人を見つめる。
ゆっきーと呼ばれた女の子は四宮雪来(シノミヤユキ)。
またの名をTikTokの大人気インフルエンサーゆきぽん。
再生回数は1000万を超えていて、チャンネル登録者数も多い。
くるみんは甘崎みくる。
メイクが上手くて、発表会のときなどにダンススクールの生徒にメイクしたりしてくれる。
そんな一軍女子にはとても近づけっこないや…。
そう思い、先生が来るまですみっこの方でスマホを触っていた。