捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした


「お見舞いのお品をご用意いたしますか?」
「あぁ、任せる。それより、今夜は空いているか?」
「はい。十九時より会食のご予定で、そのあとはなにも入れておりませんでしたので、本日はなにもございません」

副社長肝いりの新ブランド企画が走り出して以降、亮介はずっと働き詰めだ。

秘書として彼の体調管理も担う凛は、なるべく詰め込みすぎないスケジュールを心がけている。しかし彼はストイックな性格かつかなりのワーカホリックで、ちょっとした空き時間に自ら予定を詰めてしまうのだ。

「たまにはゆっくりお休みに」
「それなら、ちょっと付き合ってくれ」

凛と亮介の声が被ったが、ここは亮介が押し通した。

「十八時に社を出る。君も今日は残業しないように。時間になったら声をかける」
「……承知しました」