「きっとこれからも忙しい日は続くだろう。君は以前、会社で顔が見られる環境だから会えなくても平気というようなことを言っていたが、俺は秘書の顔の君だけでは到底足りない。プライベートな凛とふたりだけの時間を取るには、一緒に住むのが効率的だと思わないか」
あの時はまさか亮介が凛を想ってくれているとは露ほども思わず、ただ顔を見られれば幸せだった。
けれど亮介に愛され、甘やかされることに慣れた凛にとっても、もう堅物副社長の仮面をつけた彼の顔では満足できなくなっている。
二度のプロポーズを受けておきながら、まだ少し先だと思っていた彼との結婚が、急に目の前に提示された。
「当面は今の俺のマンションに住んでもいいし、君が気に入る物件を探して購入してもいい。仕事を続けるのだから家事は外注すればいいし、出社も退勤も同じ車に乗れるようになる。朝目覚めて、仕事をこなし、眠りにつくまで、ずっと君といたい」
亮介は断る口実を潰すように怒涛の勢いで話すと、指輪の輝く左手をとり、その甲にうやうやしく口づけを落とす。
あのパーティーでのプロポーズは、夢のようで幸せの絶頂のような気分だった。
けれど彼は凛が感じた頂点をやすやすと越えて、さらに幸せを注いでくれる。
こんなにも情熱的に欲してくれる愛しい人を前に、どうしてNOを突きつけられるだろう。



