「疲れたか?」
パーティーを終え、双子を乗せたタクシーを見送ると、凛は亮介が個人で取っていたホテルのスイートルームへ連れてこられた。真っすぐに帰るものだと思っていたが、どうやらこのまま泊まっていくつもりらしい。
着替えなどなにも持ってきていない凛は慌てたが、亮介は「あとですべて手配しておく」とこともなげに言ってのけ、そのまま最上階までエレベーターに乗せられたのだった。
ホテルアナスタシアに二部屋しかないインペリアルスイートは驚くほど広く、重厚なソファセットがあるリビングスペースの大きな窓からは都会のきらびやかな夜景が一望できる。
臙脂色のふかふかの絨毯にヒールをとられないように気をつけて進みながらソファに辿り着き、ふぅとひと息ついた凛に亮介が問いかける。
「今日のためにこの数週間はかなり残業をしていただろう。よくやってくれた」
社内向けのパーティーとはいえ、招待した数は数百名にのぼる。滞りなく進行するために気が遠くなるほど綿密な打ち合わせを重ね、今日を迎えた。
その運営チームの指揮を取っていたのは同僚のグループ秘書たちだ。進行を務める恵梨香など、今日の成功は彼女たちが陰日向に奔走した功績に他ならない。



