捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした


出社しなくなった後も芹那は結婚が破談になったのは凛のせいだと喚いていたらしいが、専務から事の次第を聞いた芹那の父親は呆れ返り、彼女を母親の実家に送り、都会のきらびやかな生活から切り離した場所で見合いさせると息巻いているそうだ。

芹那と孝充の仲人を務めるはずだった専務は、先輩の頼みを断りきれず芹那の人柄を知らないまま入社させたことを社長と亮介に詫び、美堂との情報漏洩の件についての窓口を買って出てくれた。

転職活動を通じて美堂の企画部長と繋がりのあった孝充は、美堂での出世ルート確約を条件に情報を流していた。

孝充から聞き出した専務は時系列など詳細に記した書面を美堂に通達し、孝充から情報を受け取っていた美堂の企画部長もまた同じく解雇された。

一連の騒動を聞いて連絡をくれた修平いわく、企画部長は美堂の社長夫人の弟であり、とにかく横柄でパワハラやセクハラ発言が多かったため、企画部の社員は彼の解雇にホッとしているそうだ。

様々なトラブルを乗り越え、こうして新ブランドを発表できた今、ポーカーフェイスでいるのは至難の業だった。

「すごいね。凛ちゃんはこういう環境で働いてるんだ」
「普段からこんなに華やかなわけじゃないよ。今日は特別」
「でもよかったね。最近ずっと忙しかったのは、このためだったんでしょ? 大成功じゃん」
「ありがとう。宣伝はふたりにも力を貸してもらうから。よろしくね」
「「任せて!」」

声を揃えて嬉しそうに笑う双子に、凛も同じように笑みを返した。