捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした


「うん、先に撮影させてもらって正解だったー……って、凛ちゃん、めっちゃニヤけてる」
「ほんとだ」
「ニヤけてないよ」
「うそ、もうすぐ海堂さんの挨拶なんでしょ? もっと前の方に行っておく?」
「いいね! 一番前で旦那さん見ればいいじゃん。そのドレスも海堂さんが選んだんでしょ? やっぱ凛ちゃんのことよくわかってるよねー」
「もう! からかわないの。静かにしてなさい」

慣れないパーティーにも物怖じせずキャッキャとはしゃぐ双子を窘める凛だが、ふたりの言う通り頬が緩んでしまっている自覚はある。

新ブランドのお披露目が無事に終わり、創立記念パーティーも盛況で幕を閉じようとしている今、達成感と高揚感に満ち溢れ、秘書の仮面を被れずにいた。

思えば昨年の六月に突然副社長専属秘書へ抜擢されて以来、いろんなことが立て続けに起こった。

恋人の裏切り、亮介からの求婚、浮気相手からの嫌がらせ、新ブランドの情報流出、スパイ疑惑……。

(結局近藤さんだけじゃなくてチーフも辞めちゃったし、そのうち人員補充があるのかな)

芹那は父親から専務を通じて正式に退職届が出され、孝充は懲戒解雇処分となった。