捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした


「はー、お腹いっぱい。美味しすぎて食べすぎた!」
「やばいよね。しばらくお菓子控えないと絶対太るー」
「こら。楽しんでくれたのはいいけど、ちょっと声が大きいよ」

そう小声で注意する凛は、総レース生地の薄いオレンジ色のドレスを身に纏っている。オレンジはオハイアリイの花の色でありブランドのイメージカラーだからと、亮介が今日のために選んで贈ってくれたドレスだ。

本来なら今日も秘書として裏方に徹し忙しく走り回る予定だったが、亮介からゲストのエスコート役を任されたため、スーツではなくドレスアップして臨んでいる。

そのゲストこそ、食べすぎたと満足気に笑い合っている凛の双子の妹、寧々と美々。

亮介はふたりのインフルエンサーとしての発信力を買い、正式にPR契約を持ちかけたのだ。

クリエと似たコンセプトになってしまい、盗用だと叩かれる懸念もある中、とにかく商品の品質のよさを伝えていくために、まず手に取ってもらえるよう広告に力を入れる方針を固めた。それには若い世代の情報発信力を使おうというのが亮介の案だ。

広報部との打ち合わせで、依頼するインフルエンサーの候補に双子の名前が上がってきた時にはひっくり返るほど驚いたが、亮介は即決で双子を選んだ。

オハイアリイのコスメで瓜ふたつの双子にそれぞれ好きなメイクをしてもらい、どれだけ差が出るかを実証できれば、個性的で自分らしくなるメイクというコンセプトを余すところなくPRできると考えたのだ。