捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした


「……うちの情報、漏れてますよね」

山本が悲痛な面持ちで呟くと、その場にいる全員の表情に緊張が走った。

コンセプトやパッケージのデザインが似通うのは同じ業界にいれば経験することだが、ここまで全てにおいて酷似しているとなると、山本が言う通り情報が外部に漏れているのだろう。

新ブランドの開発過程については厳重に管理されており、リュミエールの社員にすら共有されている情報は少ない。

サーバー内にあるフォルダに保管されている情報は、出力はもちろんUSBにコピーすることも禁じられている。新ブランドのフォルダには閲覧権限を持つ一部のパソコンでしかアクセスできない仕様になっていて、その権限は総責任者である亮介やその秘書の凛、新ブランドの開発チームや広報部の担当者など一部の人間にしか与えられていない。

外部の人間がサーバー内の特定のフォルダにハッキングしたか、または、あまり考えたくはないが内部に情報をリークした人間がいることになる。

どこの業界でもそうだが、どちらが先に企画したかではなく、どちらが先に世間に発表したかが勝負となる。情報を盗んだ証拠など残しているはずがなく、犯人が自白しない限り故意に類似させて作ったと証明ができないためだ。

(どうしよう、せっかくもう少しで形になるはずの新ブランドが……!)