捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした


亮介との結婚を承諾してからというもの、これまで以上に自分の身だしなみに気を遣うようになった。隣に並んでも不自然ではないように、そして少しでも彼に可愛いと思われたいという欲が出てきたためだ。

契約結婚を提案されているこの状況が彼女が言う通り『いい恋』かはわからないが、少なくとも凛にとってはいい影響を及ぼしているのは間違いない。

けれど、いくらお世話になっている仲のいい恵梨香が相手でも、交際0日の契約結婚だと話すわけにはいかない。孝充や芹那から庇ってもらう際に恋人のフリをしたのがきっかけで、そういうことになったと濁して伝えた。

「すごいトントン拍子ね。いつ頃入籍の予定なの? もう社長にも報告したんでしょう?」
「はい。でもまだ詳しくは決まっていないんです。ちょっと今は忙しすぎて……」
「そっか、記念パーティーで新ブランドのお披露目が控えてるもんね」
「そうなんです」
「ねぇ、じゃあふたりきりの時の副社長ってどんな感じ?」
「ど、どんなと言われても……」
「だって会社での雰囲気のままってことないでしょう? 堅物と言われる副社長の恋人に見せる顔って想像できないんだもん。そもそも笑顔が想像できない」

そう詰め寄られ、先日のマンションでの甘い一夜が脳裏に蘇る。