(あ―、朝ご飯も豪華でおいしかったなぁ)



花の刺繍が施された白いテーブルクロスが敷かれた大きな食卓を三人で囲みながら、そう思う。



(それに、あの砂糖菓子もまた食べられたし)



しょりしょりとした食感ながらも、口の中てさあっと溶けていく砂糖菓子、まさに絶品と言うべきか…



「苑ちゃん」

「はっ、はいっ!」



怜くんに声をかけられ、柄にもなく大きな声を出してしまう。



「ふふっ…かわいい…じゃない、あのね、大事な事なんだけど__」



かわいいと言われたことを少し気恥ずかしく思いながらも、即座に笑顔を真顔になおした怜くんの表情にならうように、すっと背を伸ばして真剣な表情を作る。

すう、と怜くんが息を吸う。



「__僕たちと、一緒に暮らさない?」

(え…!?!?)



怜くんが言葉を続ける。



「それに__ここにいた方が、苑ちゃんにとっても、幸せだと思う」

「ほら、苑も昨日言ってただろ?学校に行くの疲れるし、家にも誰もいないから毎日楽しくないって」



と、煌くん。



(あ、昨日三人で廊下を歩いて部屋まで案内してもらった時のことだ…。確かに、それもそうだけど…。)

「でも、学校とか、お父さんとかに知られたら、怒られちゃうし…」

(本当は…ここに、いたい…けど…)



自分の心の声に蓋をするように、うつむきながらそう言う。



「あぁ、それなら大丈夫。実は僕たち、苑ちゃんのお父さんの知り合いで、昨日そのことについて確認取っておいたんだ」

「えっ!?そうだったの!そんなの初耳…!」

「言われていなかったの?とりあえず、苑ちゃんのお父さんが言うには好きなだけいていい、だってさ!」



と怜くんがにこやかに告げる。



(本当に…!やった!嬉しすぎる…!)

「だったら、着替えも部屋にあるやつ使いなよ」



と怜くん。



(でも、なんで⋯お父さんと連絡取れたんだろ…?昨日わたしが部屋でお父さんに泊まりの許可を貰うためにメール打とうとした時は、通信環境じゃないって表示されて、送れなかったはず…)



「改めてようこそ、僕たちのお姫様!」



そんな小さな疑問は、このお屋敷で暮らせるという喜びに吹き飛ばされて消えてしまった。