また人間に姿を変える前、俺たちは人目をはばかるようにダンボール箱の中に入れられて、捨てられていた。

苑は、もうそんな昔のことなんか覚えてもいないだろうし、そもそも俺たちがあの幼い猫だなんて知らないはずだが、あの時が俺たちのはじめての出会いだった。



『もしかして、君たちも一人ぼっちなの?』



誰もが見て見ぬふりをして通りすぎていく中、君だけが薄汚れてしょぼくれた俺たちに声をかけてくれた。

そして、俺たちを引き取ってくれる人をしばらく探し歩いてから、大きい公園の中にある木の下で雨宿りをしていると、君が寂しそうに話しかけてきた。



『…ねえ、君たちはどこから来たの?』

『わたしね、いま学校でも家でも居場所ないんだよね…。だから、もしも君たちが帰る場所がなかったら、おそろいだね…。』



そう言った君の寂しげな笑顔が、どうしようもなく辛くて、悲しくて。

でもその一方でどこまでも透き通ったその笑顔に生まれた感情は、簡単には止まらないほどの胸の高鳴りだった。