(どうしてだろう。俺は彼女に結婚して欲しい?せっかくの血筋を繋いでいって欲しいから?確かに貴重なお家柄だもんな。あ、でも紘さんがいるか。エレナさんといずれ結婚されるだろうし。うわー、あのお二人のお子さん、もの凄く美形だろうな。楽しみだなー)

そんなことを考えていると、妙に静かなことに気づいた。
ふと隣を見ると、美紅がウトウトとソファにもたれて眠りに落ちている。

伊織はそっと立ち上がってブランケットを持ってくると、美紅の肩に掛け、首元をしっかり覆うように整えた。

次の瞬間美紅がパッと目を開き、伊織の襟元を両手で掴むと、あっという間に身体を反転させてソファに押し倒す。

「うぐ、くるし…。ちょ、待って」

伊織は必死で美紅の手をタップする。

「はっ、本堂様!大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫。はあ、やられるかと思った」
「申し訳ございません!わたくしったら、つい…」
「いや、いいんだ。君のご先祖がいかに立派な武将であったかが身を持って分かったよ。あはは…」
「本当に申し訳ありません。わたくし、いつまで経ってもこんな調子で…。令和の現代にこんなわたくしがお嫁にいける訳ないですわ」

見たこともない程弱々しく呟く美紅に、伊織は驚く。
初めて美紅の本心が見えた気がした。

「そんなことはない。君はたとえいつの時代に生きていたって、とても魅力的だよ。そのままの君でいればいい」

おずおずと視線を上げる美紅に、伊織は微笑んでポンと頭に手を載せた。