「それではこれより、神前式を始めさせて頂きます」

時間になり、控え室にいた皆は一斉に立ち上がった。

まずは参進の儀。
雅楽の演奏が鳴り響く中、神主と巫女を先頭に伊織と美紅、仲人の木崎社長夫妻、両家の親族が社殿に向かって境内をゆっくりと進んでいく。
一歩一歩神様に近づくのを感じて、美紅は心を清らかにしていった。
神主に続いて社殿に入場し、二人は神様に最も近い拝殿に着座する。

次は修祓の儀。
神様をお迎えする為に清めのお祓いを行う。
神主が祓詞を奏上し、大麻を左・右・左と振ってお祓いを行うのを、皆は起立したまま深く頭を下げて受けた。

身体を清めて準備が整ったら、いよいよ本格的に式が始まる。
神様に向かってご挨拶した後、神主が祭儀の内容や祈願が盛り込まれた祝詞を奏上した。

次に行われるのが三献の儀。
新郎新婦がお神酒を交互に飲み交わす、いわゆる「三々九度の杯」である。
使われるのは大・中・小の盃で、各3杯ずつ、合計9回飲むため「三々九度」と呼ばれるようになった。
夫婦で盃を何度も交わすことで、堅く結ばれるという意味が込められている。
美紅は1口目と2口目は口をつけるだけで、3口目にようやくコクリと静かに飲んだ。

続いての誓詞奏上は、伊織が神様に直接誓いの言葉を奏上する誓詞を読み上げ、美紅が最後に自身の名前を添える。

そして二人で神様に玉串を捧げ、二礼二拍手一礼する玉串奉奠。

その後両家の親族がお神酒を頂き、最後は斎主である神主が滞りなく神前式が完了したことを改めて神様に報告し、皆で拝礼した。