ごめん、キミが好き《短編・完結》




初めて聞いたタクマの冷たい怒りを込めた声に、私は驚きを隠せない。




…ずっと願ってた。


私だけ、ずっと好きでいて。


私だけのモノでいて。





そんなズルイ考えで、中途半端にタクマをきっぱり手放せないでいた。



自分だけ傷ついてる気になって…。




最低。








「ユイ、好きだ。」



もうずっとタクマがすぐ後ろにいて、タクマの香りでめまいがしそうだった。



私はぎゅっと、一度だけ目を閉じると、タクマの方を振り向いた。


そっとタクマと視線を合わせる。


小さく唾を飲み込んで、小さく口を開いた。



「私は…、タクマが…嫌い。」




たった一言だけなのに、声が震えた。







タクマの視線が、ゆっくり下へ落ちていくのが見えた。



「分かった。」




そう言うとタクマはそっと、ドアノブの手を離した。





これでもう、本当に最後。