‐「ほら、起きなさい」

誰かが喜々良(ききら)を起こす。

「喜々良、もう7時よ!
今日も健悟(けんご)君を起こしに行くんでしょう?」

その人物は、ユサユサと喜々良の身体を揺する。

喜々良は現在20歳だ。
夏生まれの健悟も20歳。

今更、健悟を起こしに行くはずがない。

「いやいや、健悟も1人で起き」

れるでしょう、と言いかけて口をつぐむ。

喜々良を捨てた母親がいたのだ。

「なによ、アンタ」

母親を睨むと、

「親にアンタとはなんじゃ、こら」

母親に耳たぶをひっぱられた。