昨日も今日も明日も、何も変わらない日常。クラスはいつものように賑やかな声で溢れている。そんな教室の端の席で、学級委員なのにも関わらず一人で本を読んでいる私。
この光景は入学してからずっと。ずっと変わっていない。
またそんなことを考えていると、ふと視界の端に、見慣れた顔がうつった。

「あっ、陽菜(ひな)ー!おはよう!」
「おはよう、海琴(みこと)くん。」

木嶋(きじま)海琴。
成績優秀、運動神経も抜群。一緒に学級委員を務めている。
人当たりも良く誰からも好かれるような人。
まさに、私とは正反対。

「お前、本当に栗原(くりはら)さんのこと好きだよなー。」

ピク、と少し耳が震える。栗原というのは私のことだ。

「やめろって、そんなんじゃないって。」

すぐ後に、焦るような声が聞こえてくる。
それはそうだよな、と心の中で思いながらも、もし海琴くんが私のことを好きでいたら、とも思っていた。

だって、私は、"今でも"海琴くんに片思いをしていたから。